離れの増築に必要な費用は|知っておきたい法規制と施工事例を紹介
ご自宅の敷地に「離れ」を造る場合、法令上は増築扱いになります。離れは様々な用途として使うことができますが、法で定められた制限をクリアする必要があります。今回は、離れを増築する際に知っておきたい法規制について分かりやすく解説します。後ほど詳細を説明していきますが、まずはこの記事で紹介している内容の結論を簡単に記載します。
POINT この記事のポイント
・離れを増築する時に注意しておかなければいけない法規制は、「一建築物一敷地の原則」「キッチン、トイレ、浴室がすべて揃っているかどうか」「建ぺい率と容積率」「防火地域・準防火地域に関する規定」「建物の高さや境界線の規定」など
・離れを増築する手順は、自治体の窓口での確認、業者に依頼してプランを作成、確認申請、着工、登記の5ステップ
・離れの増築にかかる費用は、工事内容や導入設備によって大きく異なり、1360万円ほどかかる場合もある
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知っておきたい「離れ」を増築する際の法規制
住宅の敷地内であるからといって、例え小さな建物であっても自由に増築して良いわけではありません。離れを増築する際にも建築法規に従う必要があり、「建築確認申請」が必要です。では、離れを増築する時に注意しておかなければいけない法規制について解説します。
これらの法規制はすべて満たしている必要がありますので、離れを増築したいと思ったら専門業者に相談するほうが安心です。今回は特に知っておきたい5つの法規制について、順番に詳しく見ていきます。
1. 一つの敷地内には一つの建物であること
建築基準法では、「一つの敷地内には一つの建物しか建ててはいけない」というルールがあります。これを「一建築物一敷地の原則」と言います。
「それなら、メインの住居があるから離れは建てられないのでは?」と思ってしまいますが、この場合の【建物】が何を指すのかがキーポイントです。
まず、建築基準法での「一つの敷地内には一つの建物しか建ててはいけない」というルール上の建物は、生活するための用途を満たしているもののことを指します。生活するための用途を満たしているものとは、具体的には【キッチン・トイレ・浴室】がある建物のことを指します。これを「用途上可分」と言います。
反対に【キッチン・トイレ・浴室】のいずれかがない建物のことを「用途上不可分」と言い、この場合は同じ敷地内に建てても良いことになっています。
可分/不可分 | 特徴 | 当てはまるものの一例 |
---|---|---|
用途上可分 | キッチン・トイレ・浴室がある | ・完全分離二世帯住宅 ・生活を分けた住宅 |
用途上不可分 | キッチン・トイレ・浴室のうちどれかがない | ・趣味の部屋 ・特定の居室としての利用 ・倉庫 ・料理教室などのための建物 |
つまり、ご検討中の離れがどちらに当てはまるかによって建てられるかどうかが変わるということです。上記の表のように、完全分離タイプの二世帯住宅として離れを造りたい場合は同じ敷地内には「建てられない」ということになります。
関連記事:完全分離の二世帯住宅に多い外階段のリフォーム|かかる費用はどれくらい?
趣味の部屋として水廻りがない離れを造りたい場合は、同じ敷地内に「建てられる」ということになります。ポイントは【キッチン・トイレ・浴室】がすべてあるか、どれかがないか、で離れとして増築可能かどうかが変わってくるということです。
2. キッチン・トイレ・浴室がすべて揃っている離れを建てるには?
では、【キッチン・トイレ・浴室】がすべて揃っている離れを造りたい場合にはどうすればよいのでしょうか?例えば、二世帯住宅を増築したい場合はこれに当てはまることがありますね。この場合は、敷地を2つに分けることで建築することができます。敷地を分ける方法は下記の2つです。
敷地の分け方 | 方法 |
---|---|
分割 | ・建築確認申請上の手続きを行う ・確認申請に提出する図面上で敷地を2つ以上に分ける |
分筆 | ・登記上の手続きを行う ・元の敷地を2つ以上に分けたうえで、各建物の所有者を登記する |
敷地を分けるので、もはや離れというより隣同士に建てられた別の住宅といったほうが適切かもしれません。
3. 建ぺい率と容積率は基準以内かどうか
「建ぺい率」とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことを言います。地域によって建ぺい率は異なり、例えば建ぺい率60%と定められている地域では、母屋と離れを合わせて60%に収まっていなければなりません。「容積率」は、敷地面積に対する延床面積の割合のことを言います。
こちらも建ぺい率と同様に、母屋と離れを合わせて決められた割合に収める必要があります。
4. 防火地域・準防火地域にある場合
出典:防火窓 Gシリーズ|YKKap
「防火地域」や「準防火地域」とは、都市計画法で「市街地における火災の危険を防除するため定める地域」のことを言います。詳しくは下記をご参照ください。
関連記事:新築やリフォーム時に役立つ防火地域と準防火地域の基礎知識
「防火地域」「準防火地域」には住宅の延焼ラインが定められており、離れを増築する場合にもこの延焼ラインの外側にある窓は燃えにくい防火戸にしなくてはいけません。
5. 建物の高さや境界線の規定
建物は、上空や近隣との空間を確保するために高さの制限が設けられています。この規定により近隣住宅への日当たりが確保されるので、住人にとって快適な環境づくりをするうえで大切な制限です。
5-1. 斜線制限
「斜線制限」は、道路境界線または隣地境界線からの距離に応じて、建物の高さを制限する規定です。地域がどのような用途地域なのか、また建ぺい率によって異なりますが、おおよそ20m~35mと高さの制限があります。
5-2. 外壁の後退距離
「外壁の後退距離」とは、道路や隣地との境界線から一定の距離を外壁から後退させなければいけない、という規定で、都市計画によって規定されています。地域によってはこの規定がない場合もありますが、距離をとることで日当たりや風通しを良くし、また万が一の火災の場合にも防火対策として効果があります。
離れを増築する手順
ここでは、離れの増築を行う際の手順を紹介します。
自治体の窓口での確認
まずは、お住まいの自治体の窓口にて、敷地内に増築できるかどうかの確認をします。
業者に依頼してプランを作成
増設が可能な場合は、業者に工事を依頼して、具体的なプランを作成します。
確認申請
離れを増設する敷地が、防火地域(準防火地域含む)にある場合や、10㎡を超える増築となる場合には、確認申請を実施します。なお、この確認申請は、業者や建築士に依頼するのが一般的です。
着工
業者と契約を交わしたら、いよいよ着工です。
登記
離れの完成後、1カ月以内に登記を行います。
家仲間コムの離れの増築工事事例
主屋と渡り廊下でつながる離れを増改築
【施工中】
【施工後】
施工箇所:離れ増築
築年数 :20年
施工業者:デルタトラスト建築設計室・デルタ武蔵野設計室
既存の庭に主屋と隣接する離れを造り、離れ主屋は渡り廊下でつないでほしいとのご依頼でした。詳細な打ち合わせ後に設計を行い、工事では主屋の躯体(コンクリート)を一部露出させました。給排水や電源などライフラインの制限もありましたが、ご希望通り風呂・キッチン・トイレ・洗面などを全て新しく構えられました。
関連記事:主屋と渡り廊下でつながる離れを増改築
長屋の増改築リフォーム【1360万円】
【施工後】
施工箇所:全面
築年数 :不明
施工業者:カプライリフォーム
古くなった長屋を中庭付きの家に全面リフォームしたいとの相談でした。中庭は絶対条件とのことでしたので、UB、トイレを減築して中庭に取り込み、シンボルツリーを植えています。また、自宅の基本設備として重要な浴室がなかったため、増築して住みやすさにもこだわっています。
関連記事:古くなった長屋を中庭付きのお家にリフォーム 門真市 A様邸
離れの増築の時に知っておきたい法規制まとめ
一口に離れといっても、小さな趣味の部屋から人が生活できる大きな建物まで種類があります。住宅の敷地内に離れを増築する際には、様々な法規制をクリアしておかなければいけません。
ご自身ではなかなか法規制まで詳しく調べて増築計画を立てることは難しいので専門家に相談しながら計画を進めていきますが、今回の解説がお役に立てれば幸いです。
離れの増築は専門業者に相談しよう!
離れの増築をご検討中の場合は、法規制などにも詳しい専門業者と一緒に計画を立てていきましょう。
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大永 和弘 (おおなが かずひろ)
大学卒業後、カーテンレールシェアNo1の内装材メーカートーソー株式会社にて、7年間勤務。
入社後は、大手ハウスメーカーやリフォーム会社、工務店、内装工事業者など約200社を担当。その際に新築住宅やリフォーム住宅など数多くの現場を経験。
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