床暖房リフォームの流れとは|戸建てとマンションの施工例を調査
足元からじんわり暖めてくれる床暖房は、冷え性の方に最適で、空気も汚さず、部屋も広く使えてとてもオススメの暖房器具です。今回は、床暖房リフォームの流れと実際の施工例を調べてみました。まずはこの記事のポイントをまとめました。
POINT この記事のポイント
・床暖房リフォームは「フローリング張替え」か「既存床に新フローリングを貼る」
・床暖房リフォームの際には確認すべき点・注意点がいくつかある
・床暖房リフォームの最多価格帯は約60万円~80万円
目次 [ 非表示 ]
戸建て住宅の床暖房リフォームの流れ
床を張替えるには、「フローリングを張り替える方法」と「既存の床の上から新しいフローリングを貼る方法」の2つの方法があります。 どちらも、床暖房対応のものであれば、フローリング、タイル、カーペット、畳などの床材を選ぶことができます。
1. フローリングを張り替える方法
フローリングを同じ位置に張るため、段差がつく心配がありません。施工期間は3~4日程度です。既存フローリングの撤去処分、新規フローリング貼り替えの費用がかかります。
2. 既存の床の上から新しいフローリングを貼る方法
張り替える方法と比べて床を剥がす手間がかからないため、比較的、安価に施工でき、施工期間も1~2日で完成です。現在の床よりも約3cm高くなりますが、スロープを使うなど段差を意識させない工夫で解消されます。
施工の流れ
【既存の床の上から張る方法、ガス床暖房の場合】
①既存の床の補強
床暖房の熱によって既存の床が床鳴りしないよう、下地補強用のビス打ちをします。
②床下に温水を通すチューブを配管
床下に断熱チューブを配管し、ガス熱源機から断熱ペアチューブを配管します。
③温水パネルを敷き詰める
既存の床の上から床暖房パネルを設置します。
④温水チューブと温水パネルをつなぐ
床下に配管した断熱ペアチューブと温水パネルを接続します。
⑤ダミーパネルを敷く
床暖房は床面積の50~70%にしか敷かないため、温水パネルの周辺に同じ厚さのダミーパネルを敷き詰めて、床の高さを揃えます。
⑥床材を敷き詰める
温水パネルの上に床暖房対応の床材を敷き詰めます。
⑦リモコンの取り付け
床暖房リモコンの配線と取り付けを行います。
⑧水漏れのチェック
温水チューブや温水パネルから、水が漏れていないかの検査をします。
⑨配管接続
床暖房の熱源機を設置して温水配管を接続し、圧力テストと試運転をして設置完了。
マンションの床暖房リフォームの流れ
マンションの床暖房リフォームは、基本的に既存の床の上からフローリングを貼る方法になります。 戸建住宅と違い、フローリング下に空間がないためです。また、給湯器のスペース等も限られている場合が多いので、給湯器は床暖房対応のものに入替えることもあります。(ただし、温水暖房付給湯器は使用可能)
段差が生じてしまうため、スロープを使うなどの工夫が必要になります。
床暖房の設置面積は?
床暖房の設置面積は、部屋の広さの60~70%が快適な床暖房の目安です。60%以上敷き詰めると効果が発揮されます。マンションなどの集合住宅の場合は気密性が高いため、50%以上が目安です。
床暖房リフォームの際に確認すること
■床暖房を設置する場所
設置エリアを複数にわけるなどの工夫で、ランニングコスト(燃料費)を安く抑えることができます。
■設置面積
床暖房を主暖房として使う場合、部屋全体の60~70%に設置すると効率よく暖まります。
■電気容量
電気式床暖房の場合、運転開始時に最もパワーが必要になる「突入電力」で急激に電気容量を使います。それだけの容量があるかどうか確認し、場合によっては容量を増やす必要があります。
■床下の確認
床下に断熱材が入っていないと、せっかくの床暖房の効率が下がってしまいます。また、配管の位置やスペースの確認も必要です。
■熱源を設置するための屋外スペース
設置スペースと周りの状況の確認が必要です。海に近い場合は耐塩害仕様のものを使います。
■リモコンの設置場所
リモコンの設置と配線の場所の確認を行います。
床暖房を効率よく使うためのリフォーム
床暖房を効率良く使うためには、ランニングコスト(燃料費)を安くする工夫が必要です。床暖房は、床からの遠赤外線で壁や天井を暖め、部屋の中を遠赤外線で包み込んで温める暖房方法です。
そのため、断熱がされていない壁面だと、床から放射された遠赤外線が冷たい壁に吸収されることになり、暖めるために多くのエネルギーが必要になります。床暖房リフォームの際には、家の中の断熱性をチェックしましょう。
壁の断熱材を厚くしたり、窓を二重ガラスにするなど、床暖房リフォームと同時に施工することで、床暖房の効果がより発揮され、ランニングコスト(燃料費)も安く抑えられます。
住宅金融支援機構の新省エネ基準「新フラット35S」の基準を満たせば、低金利融資制度の対象になりますので、相談されてみてはいかがでしょうか。
床暖房の上手な使い方
初期費用や光熱費がかかるイメージの床暖房ですが、上手に使うことで節約もできますし、なにより寒い季節を快適に過ごせます。
●カーペットのダニ退治に
ダニが繁殖しやすいカーペットですが、床暖房の上に敷くことでダニ中から表面へ逃げ出します。あとはカーペットの上から掃除機をかければ簡単にダニ退治できます。ただし、床暖房の上に敷くカーペットは床暖房対応の物を選びましょう。
●余熱をうまく使って節約
床暖房は運転スイッチをOFFにした後も、余熱でしばらくは設定温度近くを保ち続けます。ランニングコストを抑えるためにも早めにOFFにしておくことで節約になります。
●すぐに暖めたい時は
朝の起床時などは、タイマーで早めにONにしておくことで、起きたときには快適な温度にしておくことができます。帰宅時など、どうしても早く暖めたい場合は、エアコンなどの暖房器具と一緒に使っても良いでしょう。ただし、他の暖房器具を使えば光熱費は上がりますので、床暖房が暖まってきたら他の暖房器具は消しましょう。
床暖房リフォームの注意点
■床材に注意
床暖房を設置する際の床材には、耐熱性があって熱伝導率の良いものを使用する必要があります。一般的なフローリングは、熱に弱く、反りや割れが発生したり、隙間があいたりする場合があるので、床暖房対応のものを使用しましょう。最近では、畳やタイル、コルクなどの床材でも床暖房に対応している商品が出ています。
■床暖房を設置する場所や広さ
床暖房は、全体に設置する必要はなく、部分的に設置します。ソファーやベッドの下に設置してもあまり意味がないですし、施工費や光熱費もかかってきます。床暖房リフォームを行う際は、設置する場所や広さをよく検討しましょう。
■床暖房の上に物を置くときは
床暖房を設置した場所に木製品を直接置くと、その部分に熱がこもり、木製品に変形やひずみが生じたり、床材が変色してしまう場合があります。高価な家具や、精巧な調度品などを置く場合は、直接置かず、下に板などを1枚敷くようにしましょう。
じゅうたんや厚手のカーペット、座布団なども熱がこもりやすいので、床暖房を利用する際にはこれらの使用はなるべく控えるか、床暖房対応の素材のものを使用しましょう。
床暖房にするなら床下の断熱も忘れずに
床暖房は足元からポカポカと暖まり、まさに頭寒足熱の快適な暖房方法ですね。しかしせっかく床を暖めても、床下にしっかり断熱材が入っていなければ、熱は床下にも逃げてしまいます。暖房にかける光熱費を逃がしてしまうなんて、もったいないですよね。プロに相談する際は現在の床下の断熱状況を調べてもらい、必要があれば断熱材の補強工事も依頼できるよう、予算に余裕を持たせておけるといいですね。
監修者:高橋 みちる(一級建築士)
床暖房リフォームの費用相場と施工例
床暖房リフォームの価格は、床暖房の内容や使用する床暖房設備、工法や面積、そして現状などによって変わります。最低価格は30万円~、最多価格帯は60万円~80万円が一般的な相場となります。それでは、実際に家仲間コムに寄せられた施工例を見てみましょう。
■電気式床暖房の取り付け
築20年、2階建て、10畳の居間
50万円~80万円
■リビングの床暖房リフォーム
築22年、木造2階建て、約12畳のリビング
50万円~80万円
(床張替えで床下に断熱材を敷き込み、電気式での見積もり)
■リビング・キッチンにガス温水床暖房を設置したい
新築、木造2階建て、約12畳のリビングキッチン
60万円(電気式)~140万円(温水床暖房)
■リビングに床暖房を設置
築15年、マンション、10畳のリビング
115万円~138万円
(電気床暖房、床下地工事、フローリング工事の見積もり)
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アールイーデザイン一級建築士事務所代表。
住宅業界で新築・リフォームの営業・設計・現場監理などを経験。
これまで3000件以上の現場を見ながら、「永く、快適に住み続けるためにはどうしたらいいのか?」を常に探求し続け、リフォーム提案を行っている。
また、現在は執筆活動や企業向けの社員研修、一般向けの講演会なども全国各地にて実施。
著書「やらなければいけない一戸建てリフォーム」(自由国民社、2020年7月発売)
【保有資格】
- 一級建築士(登録番号:第331817号)
- 既存住宅状況調査技術者(証明書番号:第02201400260号)
- 住宅性能評価員(終了証番号:第02170424号)
- インテリアコーディネーター(登録番号:011961A)
- 福祉住環境コーディネーター2級(証書番号:05201851)
- 震災建築物応急危険度判定士(認定番号:730220552)
【所属】
- アールイーデザイン一級建築士事務所:代表
- JIO|株式会社日本住宅保証検査機構:検査員 及び 評価員
- 三井ホーム株式会社:リフォームプランナー
noteにてリフォームに関するお役立ち情報を発信中!
高橋みちる|リフォームコンサルタント|note
利用会員数260,000人、登録リフォーム会社数1,400社を超える日本最大級のリフォームマッチングサイト「家仲間コム」を運営するリフォーム専門家集団の編集部が、一般的なリフォームの情報を纏めた簡易的な記事ではなく、実際の見積情報や価格相場に基づいた読者に役立つ、価値ある情報をお届けしています。
大永 和弘 (おおなが かずひろ)
大学卒業後、カーテンレールシェアNo1の内装材メーカートーソー株式会社にて、7年間勤務。
入社後は、大手ハウスメーカーやリフォーム会社、工務店、内装工事業者など約200社を担当。その際に新築住宅やリフォーム住宅など数多くの現場を経験。
関連するテーマの見積もり依頼
床暖房の傷修理 | ¥15,000 ~ ¥30,000 |
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床暖房の床に傷と穴が空いてしまい修繕希望 | ¥22,000 ~ ¥25,000 |
リビングに床暖房を新設したい | ¥900,000 ~ ¥1,200,000 |
床暖房後づけ | ¥1,000,000 ~ ¥1,590,000 |
床フローリング全面張り替え | ¥83,000 ~ ¥100,000 |
※価格はこの依頼での一般的な価格相場です。
床暖房で冬を快適に
床暖房は足元から暖かく、とっても心地いいですよね。暖房の種類には大きく分けて2種類、エアコンのように空気を暖める方法と、床暖房のように暖かい物体から熱線を放射させる方法があります。最近のエアコンは省エネ性能は向上していますが、気密性が低い家では暖めた空気が逃げやすく、不快な隙間風が生じたり熱効率も下がってしまいます。その点床暖房なら、どんな家にもポカポカと暖かい快適な空間をつくれるのです。
監修者:高橋 みちる(一級建築士)