賃貸の原状回復工事は本当に必要?よくある事例と費用相場を紹介

原状回復工事でトラブルにならないために

賃貸の原状回復工事は本当に必要?よくある事例と費用相場を紹介

賃貸住宅退去時の原状回復工事は、管理会社や不動産会社などとのトラブルになりがちです。要求された原状回復工事が正当なものか、また費用は適切か判断することはトラブルを避ける意味でとても大切です。今回は賃貸住宅退去時の原状回復工事の内容や費用について解説します。まずはこの記事のポイントをまとめました。

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POINT この記事のポイント

・原状回復工事とは故意や過失によって破損・劣化した部分を回復させる工事のこと
・原状回復工事費用は修復が少ない場合で約2万円〜全体的に行う場合で60万円程度
・原状回復工事が必要ないケースもある
・原状回復工事の必要の有無に迷ったら専門業者に相談する

原状回復工事とは

原状回復工事でよくあるトラブルとして、「原状回復工事ではなくリフォームレベルの工事を要求された」というものや「借りたときの状態まで戻すことを要求された」というものがあります。前者は言うまでもありませんが、後者のようなものを原状回復工事というのだと思っている人は少なくありません。

国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、原状回復工事とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」とされています。

つまり、通常の使用で経年劣化した部分については借りたときの状態に戻す必要はなく、故意や過失などによって破損、劣化した部分を回復させる工事が原状回復工事ということです。

原状回復工事の費用相場

原状回復工事の費用相場

原状回復工事は、賃借年数や工事箇所、広さによって費用に差があります。修復箇所が少なければ2万円程度〜、全体的な原状回復工事が必要な場合でも60万円程度までにおさまる場合が多いようです。

しかし、工事箇所や内容によって費用にかなりの幅があるため、自分が借りている家の場合どのような内容の原状回復工事が必要で費用はどれくらいかかるのか心配になるものです。

監修者コメント
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原状回復費用の内訳はしっかり確認しよう

賃貸住宅から退去する時は、引っ越し先での手続きなどもあったりでバタバタしていることが多いですね。そんな時に不動産会社などから「お預かりしている敷金から原状回復費用を差し引きます」といわれたら、そのまま「お願いします」と答えてしまうことも多いのではないでしょうか。でもその原状回復費用は、もしかしたら支払う義務がないものかもしれません。費用の内訳はしっかり説明してもらい、納得して支払うようにしたいですね。

監修者:高橋 みちる(一級建築士)

原状回復工事の内容と費用

ここからは、原状回復工事の内容別の費用について紹介していきます。

1. 壁・天井の原状回復工事

まずは汚れやすい壁や天井の原状回復工事にかかる費用を見ていきましょう。

1-1. 壁穴修理

壁穴壁についた穴(※画像はイメージです。)

物をぶつけてしまった場合などの壁穴のほか、ネジ穴や釘穴も原状回復工事の対象になる場合が多いです。多くの場合、画鋲による穴は原状回復工事の必要はないとされています。

壁穴修理 原状回復工事費用・・・2万円〜5万円程度

1-2. 天井穴修理

天井穴天井にあいた穴(※画像はイメージです。)

賃貸住宅でよくあるのが、上階の音がうるさいので棒などで天井を突いて穴をあけてしまうというケースです。この場合も原状回復工事が必要となります。

天井穴修理 原状回復工事費用・・・2万円〜5万円程度

1-3. 壁紙張替え

壁紙張替え壁紙の張替え(※画像はイメージです。)

壁紙張替えは、経年劣化による黄ばみなどの場合は必要ありません。ただし、ペットによる爪とぎの傷がある場合や掃除を怠ったことによる激しい汚損過失によるシミなどがある場合は壁紙張替えによる原状回復工事の必要が生じます。

壁紙張替え 原状回復工事費用・・・900円〜1,200円程度/m2

2. 床の原状回復工事

続いて床の原状回復工事についてみていきましょう。

2-1. フローリング凹み・剥がれ修理

フローリングの剥がれフローリングの剥がれ(※画像はイメージです。)

フローリングに物を落としてへこんでしまった場合や家具などに引っ掛けて剥がしてしまった場合、ペットの尿などで傷んでしまった場合などは原状回復工事が必要です。フローリングのへこみや剥がれの場合はフローリング張替えまでは必要なく、部分補修での原状回復工事で済む場合が多いです。

フローリング補修 原状回復工事費用・・・2万円〜4万円程度

2-2. フローリング張替え

フローリング張替えフローリングの張り替え(※画像はイメージです。)

過失や掃除不十分によりできてしまった広い範囲の変色カビなどのフローリングの傷みの場合、フローリング張替えでの原状回復工事を行う場合もあります。冷蔵庫のサビ跡などの場合も張替えとなる場合が多いです。

フローリング張替えの場合、部分張替えでの原状回復工事か全体張替えでの原状回復工事となるかは傷み具合などによって変わります。

フローリング張替え 原状回復工事費用・・・12,000円程度〜/m2

2-3. クッションフロア張替え

クッションフロアを焦がしてしまった場合や水濡れを放置してブヨブヨに傷んでしまった場合など、過失による傷みの場合は張替えによる原状回復工事が必要です。クッションフロアは重みでへこみができやすいものですが、家具や家電などを置いてできたへこみは生活に必要な範囲ということで原状回復工事は必要ないことが多いです。

クッションフロア張替え 原状回復工事費用・・・4万円〜5万円程度/6帖

3. 水まわりの原状回復工事

ここからは水まわりの原状回復工事について紹介します。

3-1. キッチンシンクのへこみ修理

キッチンシンクのへこみキッチンシンクのへこみ(※画像はイメージです。)

キッチンシンクに物を落としたりしてへこみができた場合、原状回復工事が必要です。天板交換となるか修理のみで済むかは状況によって変わりますが、天板交換ではなく修理での対応として原状回復工事を行う場合も多いようです。

キッチンシンク修理 原状回復工事費用・・・2万5千円〜4万円程度

3-2. 洗面ボウル交換

洗面ボウル洗面ボウル(※画像はイメージです。)

洗面ボウルにビンなどを落としてヒビ割れをしてしまった場合、補修ではなく交換となることがほとんどです。一般的には洗面台そのものの交換ではなく、洗面ボウルのみの交換で済ませることができます。

洗面ボウル交換 原状回復工事費用・・・3万円〜5万円程度

3-3. ウォシュレット便座取り外し

ウォシュレット便座:ウォシュレット便座(※画像はイメージです。)

入居してからウォシュレット便座を取り付けした場合、ウォシュレット便座を取り外し入居時についていた便座を取り付ける原状回復工事が必要です。

便座原状回復工事・・・6,000円〜1万円程度

4. その他の原状回復工事

最後にエアコンの取り外し後やドア穴の修理について説明します。

4-1. エアコン取り外し

入居してからエアコンを取り付けた場合、取り外しをする必要があります。エアコンを取り付ける許可を得ている場合、エアコン設置のためにあけた穴などがあっても穴をふさぐ原状回復工事をする必要はない場合がほとんどです。

エアコン取り外し 原状回復工事費用・・・5,000円〜3万円程度

4-2. ドア穴修理

ドアに物をぶつけてしまったりして穴があいた場合、穴をふさぐ原状回復工事が必要です。ドア穴の場合、ドアの交換をしなくても補修で対応できる場合が多いですが、マンションオリジナルドアの場合などはドア交換が必要なケースもあります。

ドア穴修理 原状回復工事費用・・・2万円〜5万円程度(補修の場合)

原状回復工事が必要ないケース

原状回復工事が必要ないケース

上記のような、借主の過失による損傷の場合や自分で取り付けたものの取り外しなどが必要な場合の工事は、原状回復工事として借主の負担となります。一方で、原状回復工事が必要ない場合とはどのようなものでしょうか。

冷蔵庫やテレビの後部壁面の電気ヤケ(黒ずみ)
→電化製品によって起こる黒ずみは生活のうえで起こりえる損耗の範囲なので、原状回復工事の必要はありません。

家具によるカーペットやクッションフロアのへこみ
→カーペットやクッションフロアのようにやわらかい素材の場合、家具を置いたことによるへこみは原状回復工事の必要はありません。

畳や壁紙の変色
→日焼けなどによる変色は生活のうえで起こりえる範囲の損耗なので原状回復工事の必要はありません。ただし、物をこぼしてしまったなど過失による損傷の場合は原状回復工事が必要です。

画鋲による壁穴
→画鋲による壁穴は、日常生活において必要なものと判断されるため原状回復工事の必要はありません。

鍵交換
→鍵を失くしてしまったなどの過失がない場合、鍵交換をする必要はありません。

原状回復工事の注意点

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が国土交通省から発行されているにも関わらず、原状回復工事にはトラブルがとても多いのが現状です。原状回復工事を行う上で、またその前の段階から、注意しなければいけないことをご紹介します。

壁紙やフローリングの張替え費用は借主の全額負担ではない

壁紙やフローリングを全面張替えする原状回復工事が必要な場合でも、経年劣化している部分もあるため借主が全額負担する必要はないとされています。通常壁紙やフローリング張替えの費用は1㎡単位で算出し、損傷の度合いなどによって負担割合を取り決めます。

指定業者での原状回復工事は割高なこともある

管理会社や不動産会社から指定された業者で見積もりを聞かないまま原状回復工事をすることになり、思いがけない金額を請求されたというケースはよくあります。退去日よりも前に余裕を持って見積もりを頼み、しっかりと見積もり内容や金額を聞いておきましょう。指定業者以外にも見積もりを取ることもオススメします。

判断に迷った場合は専門業者や管理会社に相談

原状回復工事の必要があるのかどうかや、補修なのか交換なのかなど、判断に迷った際には自己判断で原状回復工事を行わず相談しましょう。自己判断で原状回復工事を行った場合、退去時にさらに原状回復工事が必要といわれるケースもあります。

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は入居前に確認

ガイドラインはあくまでもガイドラインであり、契約書を締結したあとではあまりにも不当なことが書かれていない限り契約書の方が優先される場合も多くあります。そのため、原状回復工事についての取り決めはどうなっているのか、入居時に確認しておくことが大切です。

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要求には対等な話し合いを

その原状回復費用は、そもそも支払い義務があるのか?という検討はまず行うべきところですが、では支払い義務があったとして、その請求されている工事費用が妥当かどうか?も確認しておきたいところです。不動産会社には得意先の工事店があって、良心的に工事してもらえることが多くありますが、もしかしたら支払い義務のない工事まで過剰に計上されているかもしれません。要求内容に対し、こちら側でも工事代金を算出し、対等な話し合いができるといいですね。

監修者:高橋 みちる(一級建築士)

原状回復工事を割安に済ませるコツ

原状回復工事は、工事の方法などによって費用が変わってきます。そのため、できるだけ指定業者だけではなく自分で選んだほかの業者からも複数見積もりをもらい、比較してみることが大切です。指定業者で工事を行わなければいけないという規定がなく、自分で業者を頼んで原状回復工事をして良いケースの方が多いのです。

その際、どのような原状回復工事方法が良いかなどのアドバイスもプロの視点からもらい、トラブルにならないようなしっかりとした工事を頼める信頼できる業者を選定することができます。また、複数の業者から見積もりをもらうことで費用の相場もわかります。

そこで便利なのが「リフォーム一括見積もりの家仲間コム」です。ご検討中の原状回復工事の内容を匿名で書き込むだけで、地域のリフォーム会社さんから概算見積もりや提案が届きます。匿名で利用可能なので、後でしつこく営業される心配もありません。

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監修者プロフィール
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一級建築士

高橋 みちる (たかはし みちる)

WEBサイト


アールイーデザイン一級建築士事務所代表。

住宅業界で新築・リフォームの営業・設計・現場監理などを経験。
これまで3000件以上の現場を見ながら、「永く、快適に住み続けるためにはどうしたらいいのか?」を常に探求し続け、リフォーム提案を行っている。
また、現在は執筆活動や企業向けの社員研修、一般向けの講演会なども全国各地にて実施。

著書「やらなければいけない一戸建てリフォーム」(自由国民社、2020年7月発売)

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noteにてリフォームに関するお役立ち情報を発信中!
高橋みちる|リフォームコンサルタント|note

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家仲間コム編集部

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利用会員数260,000人、登録リフォーム会社数1,400社を超える日本最大級のリフォームマッチングサイト「家仲間コム」を運営するリフォーム専門家集団の編集部が、一般的なリフォームの情報を纏めた簡易的な記事ではなく、実際の見積情報や価格相場に基づいた読者に役立つ、価値ある情報をお届けしています。

執筆者プロフィール
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大永 和弘 (おおなが かずひろ)


大学卒業後、カーテンレールシェアNo1の内装材メーカートーソー株式会社にて、7年間勤務。
入社後は、大手ハウスメーカーやリフォーム会社、工務店、内装工事業者など約200社を担当。その際に新築住宅やリフォーム住宅など数多くの現場を経験。

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