外壁の下地は「通気構法」が主流|メリットや採用される理由を解説
外壁の下地について熟知して住宅を建築される一般の方は多くはありませんが、実は外壁の下地にも重要な役割があります。外壁材で仕上げてしまうため、下地は丁寧に施工しておかないと後からのリフォームは手間と時間がかかります。この記事で詳細を説明していきますが、まずはこの記事で紹介している内容の結論を簡単に記載します。
POINT この記事のポイント
・外壁の下地は、「通気構法」といって外壁材と防水シートの間に空気の層を設ける工法が現在は主流になっている
・外壁下地に通気構法を採用するメリットは、「内部結露を防ぐ」「カビが発生しにくい」「腐食を防ぐ」「雨漏り対策として有効」など
・窯業系サイディングと金属系サイディングの2種類の外壁は、通気構法を採用するよう住宅保証機構の性能表示制度で定められている
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外壁の下地は「通気構法」が現在の主流
外壁は一般的に下記の順序で建材が使用され造られているのが一般的でした。外側から順番に、【外壁材(サイデイングやガルバリウム鋼板など)→防水シート→外壁下地】このように昔の外壁工法は、防水シートを貼ったすぐ上に外壁材を施工していました。
現在では「通気構法」といって外壁材と防水シートの間に空気の層を設ける工法が主流です。【外壁材(サイデイングやガルバリウム鋼板など)→通気層→防水シート】というように、外壁材と防水シートの間に通気層(空気の層)を設けている点が特徴です。
1. 通気層ってどうして重要なの?
なぜ通気層を設けるように変わってきたかというと、近年の住宅は高気密・高断熱住宅になってきており、昔の住宅よりも気密性が高いため下地部分の通気性が低下することが増えています。下地部分の通気性が低下するとどうなるかというと、内部で結露が発生し、外壁と内壁の間に湿気が溜まってカビが発生してしまうのです。
内部結露によりカビが発生するといずれ腐食して、最悪の場合は住宅の劣化だけでなく倒壊の危険性にまでつながります。そのため、高気密・高断熱住宅が増えてきた昨今だからこそ、通気構法の外壁下地の需要が高まっているのです。
もちろん施工会社さんは、通気性のことも考慮して事前に内部結露対策をしていますのでご安心ください。施主さんもご自身の資産である家に長く大切に住むうえで、施工会社さんなどの業者さんに丸任せするのではなく基礎知識として知っておくことも大切です。
2. 構法と工法の違いは?【ワンポイント知識】
ここで、「通気構法は『通気工法』ではないの?」と漢字の違いに素朴な疑問がわく方もいらっしゃると思います。構法・工法のどちらも使用されている場合もあるのですが、当記事では「構法」を使用しています。構法と工法の違いは下記をご参考になさってください。
構法と工法の違い | 意味合い |
---|---|
工法 | ・建物全体の構造 ・施工の方法を指す |
構法 | ・建物全体の構造だけでなく一部分 ・部材の構成を指す |
外壁下地に通気構法を採用するメリット
通気構法のメリットは通気性がアップすることとお伝えしましたが、あらためてご説明します。順番に詳しく見ていきましょう。
1. 内部結露を防ぐ
高気密・高断熱住宅では、内部の丁寧な施工が重要ですがなかには内部結露が発生しやすいこともあります。主な原因は業者さんの施工不良によるものですので、業者選びは大切です。新築住宅を建築予定の方は、外壁の下地などについても、どういった施工をするのかきちんと説明してもらうことも大切ですよ。
2. カビが発生しにくい
外壁の下地部分は一度完成してしまえば、後から内部を確認することができませんので、建築段階で丁寧な施工が重要です。通気性を良くして湿気を逃がしてくれる「通気構法」を採用していれば、湿気が逃げやすくなるため内部結露を防ぎ結果的にカビの抑制にもつながります。
カビは人体のアレルギーや喘息疾患などの原因にもなることがありますので、住宅のカビ対策は重要です。
関連記事:【床下の湿気対策は万全に】恐ろしいトラブル事例と効果的な対策を紹介
3. 腐食を防ぐ
内部結露を防いでカビが発生しなくなると、住宅も腐食しにくくなります。住宅の腐食は外壁下地だけが原因ではありませんが、少なくとも外壁下地の腐食が抑制されると住宅倒壊のリスクが減ります。何十年も長く住み続ける大切な資産である住宅は、湿度対策は抜かりなく行っておくことで長持ちします。
4. 雨漏り対策として有効
住宅の経年劣化に伴い、外壁材や屋根材などからわずかながらでも雨漏りが発生し始めます。従来の外壁下地の防水シートの上から直接外壁材を張る構法では、万が一雨漏りが起こった場合に防水シートに雨が流れることになり、防水シートが劣化していた場合には内部にまで雨水が侵入するリスクが起こります。
通気構法は、通気層(空気の層)がありますので、万が一雨水が侵入してもその通気層を流れますので直接防水シートが濡れることが少なく済み、劣化を防ぐことができます。
5. 通気層により断熱効果もアップ
窓の複層ガラスは2枚のガラスとガラスの間に空気の層を作ることで断熱性を高める仕組みですが、通気構法でも同じ効果が得られます。
関連記事:窓断熱リフォームで省エネ!冬もあったか室内に。
外壁の下地材の室内側には必ず断熱材を充填していますが、通気構法にすることによってさらに断熱性を高めることができます。
外壁の下地で「通気構法」が採用できる外壁材は?
ここまで「通気構法」のメリットをお伝えしてきましたが、下記2種類の外壁材では必ず「通気構法」である必要があります。平成21年度(2009年)以降に新築される下記2種類の外壁材では、必ず「通気構法」を採用するよう住宅保証機構の性能表示制度で定められました。
・窯業系サイディング
・金属系サイディング
住宅は新築後10年以内に雨漏りした場合は施工会社が保証することになっており、そのため施工会社は住宅保証機構の住宅瑕疵保険に加入します。窯業系サイディングと金属系サイディングはその施工によって雨漏りがしやすいデメリットがあるのですが、雨漏りリスクを最小限に抑えるために「通気構法」を採用することが保険加入の必須条件となっているのです。
関連記事:サイディングの外壁とは?金属サイディングの外壁の特徴
外壁の下地についてわからないことは専門家に相談!
外壁の下地は住宅の専門家に相談するのが一番安心です。こちらの記事では一般的な外壁下地についてを解説していますが、住宅によって環境も違えば建築方法も異なりますので、相談したい場合はやはり専門家に現地確認をして詳しく説明をしてもらいましょう。
これから新築を検討されていたり、大規模リフォームをご検討中の方はぜひ訪問見積りをしてもらっていろんな専門家の意見を聞いて納得してから施工を始めてはいかがでしょうか。
安心して外壁下地の施工をお任せするには?
安心して外壁下地の施工をお任せするには、一括見積りが便利です。外壁の下地部分は施工が終わってしまえば、居住者が確認することができません。そのため事前にどのような施工を行うのか、どういった効果が期待できるのかメリットやデメリットなどを丁寧に説明してくれる業者選びが重要です。
家仲間コムの見積もりサイトには約1000社の登録業者さんがいますので、気になる点があればどんどん質問してみましょう。また、匿名・無料で見積もり依頼ができるのでしつこい勧誘などもありません。
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アールイーデザイン一級建築士事務所代表。
住宅業界で新築・リフォームの営業・設計・現場監理などを経験。
これまで3000件以上の現場を見ながら、「永く、快適に住み続けるためにはどうしたらいいのか?」を常に探求し続け、リフォーム提案を行っている。
また、現在は執筆活動や企業向けの社員研修、一般向けの講演会なども全国各地にて実施。
著書「やらなければいけない一戸建てリフォーム」(自由国民社、2020年7月発売)
【保有資格】
- 一級建築士(登録番号:第331817号)
- 既存住宅状況調査技術者(証明書番号:第02201400260号)
- 住宅性能評価員(終了証番号:第02170424号)
- インテリアコーディネーター(登録番号:011961A)
- 福祉住環境コーディネーター2級(証書番号:05201851)
- 震災建築物応急危険度判定士(認定番号:730220552)
【所属】
- アールイーデザイン一級建築士事務所:代表
- JIO|株式会社日本住宅保証検査機構:検査員 及び 評価員
- 三井ホーム株式会社:リフォームプランナー
noteにてリフォームに関するお役立ち情報を発信中!
高橋みちる|リフォームコンサルタント|note
利用会員数260,000人、登録リフォーム会社数1,400社を超える日本最大級のリフォームマッチングサイト「家仲間コム」を運営するリフォーム専門家集団の編集部が、一般的なリフォームの情報を纏めた簡易的な記事ではなく、実際の見積情報や価格相場に基づいた読者に役立つ、価値ある情報をお届けしています。
大永 和弘 (おおなが かずひろ)
大学卒業後、カーテンレールシェアNo1の内装材メーカートーソー株式会社にて、7年間勤務。
入社後は、大手ハウスメーカーやリフォーム会社、工務店、内装工事業者など約200社を担当。その際に新築住宅やリフォーム住宅など数多くの現場を経験。
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外壁の張り替えは、ぜひ通気構法で
通気構法が定着したのは比較的最近なので、通気構法が採用されていない建物もまだまだ多く存在しています。もしご自宅の外壁が傷んでいて、「そろそろ張り替え時かな」と思われているなら、ぜひ通気構法のご採用をおすすめします。リフォームでは今の外壁の上から重ねて張る「カバー工法」を選択できる場合もありますので、ぜひ信頼できるプロに相談し、ご自宅の状況やご予算に合わせた方法を選んでくださいね。
監修者:高橋 みちる(一級建築士)